アルコール依存症でも出産できるのか〜胎児への影響〜

アルコール依存症の女性からは、「胎児性アルコール症候群」(略称: FAS)の子供が生まれやすく、約40パーセントの子供がFASを発症していると言われています。FASの主な症状は、中枢神経系の異常が原因で起こる脳性小児麻痺・てんかん・学習障害・行動障害(過少行動・過剰行動)と、低体重などの発育不全が中心となっていますが、その他に、頭部などの形態異常も見られます。

FAS発症の原因については、妊娠中の女性の飲酒だけを原因とする説と、妊娠以前の生殖細胞に対するアルコールの影響も原因であるとする説の2種類に分かれています。前者の説に従えば、FASは胎児と母体に対するアルコールの直接的な悪影響が原因であり、たとえアルコール依存症であっても、妊娠期間中に飲酒しない限り、FASの子供を出産することはないということになります。一方、後者の説では、習慣的な飲酒によるアルコールの影響で男女いずれかの生殖細胞の遺伝子が破損していることも、FASの原因となり得るとし、父親がアルコール依存症であった場合にもFASの子供の出産例があるとしています。この説に従うとしても、一般に、アルコール依存症の男性は生殖能力が衰えるとされており、FASについて男性の影響を懸念する必要はないように思われます。しかし、遠からず妊娠出産を経験する可能性のある女性の場合は、アルコール依存症であるなしにかかわらず、飲酒をひかえた方が良いようです。


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いずれの説が正しいにしても、胎児に対するアルコールの悪影響があることは明らかです。特に妊娠2ヶ月目までの飲酒は、脳をはじめとする胎児の各器官の形成に悪影響を及ぼす可能性が高く、妊娠中期・後期における飲酒は、発育不全の原因になるとともに、中枢神経の発達にも影響があるとされています。従って、現在では、妊娠中の飲酒は避けるべきという点で専門家の意見が一致しています。また、出産後も、母乳中のアルコール成分による乳児への悪影響があり得ると考えられており、授乳期間中の飲酒はひかえるべきとされ、もし飲酒した場合は、12時間程度は母乳を与えず、粉ミルクを与えるべきとされています。

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